名古屋高等裁判所 昭和25年(う)962号 判決 1950年7月15日
被告人
服部宏
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人佐藤正治の控訴趣意第二点について。
原審は、起訴状記載の公訴事実第一の(二)及び第二の事実を有罪と認定しその補強証拠の一部として、太田春一の被害届と安藤善雄の被害届を挙げ、原審公判調書の記載によれば、右各被害届について証拠調が為されたことが認められるけれども、本件記録添附の証拠書類を見れば、執れも被害届の謄本が添附せられていることは所論の通りである。然れども証拠書類は、裁判所の許可を得たときは、原本に代え、その謄本を提出することができるものであつて、本件においては、許可を得て、謄本を提出したかどうか、記録上不明であるが、裁判所が任意に受理して居り而もその内容は朗読されているので、裁判所の許可を得て謄本を差し出したものと推察することができる。仮りに正式な許可なく提出していても、証拠は公判廷において朗読された内容を援用したことになるので、右許可の手続に違法があつても、判決に明らかに影響する訴訟手続の違法と謂うことはできない。